労働分野も「ジャパン・パッシング」に
本間 俊典[著]
/ 2009-09-10
/ ブックマーク
政権交代騒動の中でスッポリ抜け落ちている問題があって、以前から気になっています。外国人労働者のことです。日本は外国人労働者に門戸を開くのか、開かないのか。不法滞在も含め、すでに日本で就労している外国人を、法的にどう扱うのか。「内なるグローバリズム」とも言うべき課題に、新政権がどんな姿勢で臨むのか視界不良です。
9月10日の毎日新聞「経済観測」欄で、東大の伊藤隆敏教授が「日本への関心が低い」と題して、興味深いエピソードを披露していました。東大と米コロンビア大との学生交換事業で、コ大からの東大留学希望者がいなくなり、焦った伊藤先生が現地へ出かけて授業をしようとしたら、コ大側から「“日本の金融資本市場”では学生が集まらないから、“アジアの金融資本市場”にしてほしい」と言われ、「そこまで日本に関心がないのか」と嘆息したお話。
台頭する中国やインドなどの新興勢力に押され、経済分野だけでなく、学術分野でも「ジャパン・パッシング」が確実に進んでいるようです。それは、単に経済力の問題ではなく、日本が国力のピークにあった1980-90年代(と私はみています)に、多くの外国人労働者が押し寄せた際、政府が外国人にとって公平でわかりやすい受け入れルールを明確にしなかったからだと思います。
また、背景にある日本の“内向き姿勢”が、外国人にとって「ミステリアス」に映っている点も見逃せません。よく言えば「神秘的」、悪く取れば「何を考えているのかわからない」というわけです。
例えば、EPA(経済連携協定)の締結に基づいて、日本は昨年からインドネシア人の看護師・介護士を受け入れましたが、政府はあくまでも日本の基準に従ってもらうと、日本語の国家試験に受かることなど、およそ達成不可能な条件を押し付けたため、来日希望者は昨年も今年も定員割れ。同様に、フィリピンからの希望者も定員割れ。猫の手も借りたい看護・介護現場の期待にも応えていません。
外資系の大手人材ビジネス幹部と話した際、その幹部氏は「夢や憧れの問題もある」と評していました。世界中から移民を受け入れている米国の場合、日本では考えられない格差や人種差別のあることは周知の事実ですが、それでも毎年、何万人という非英語圏の若者らが移入して、ひと旗挙げる夢を追いかけています。少なくとも米国は、機会の平等だけは確保しようと努力しています。
これに対して、日本は厳しい滞在規制を設けているうえ、国民の間にも「日本語が通じないとダメ」「治安が悪くなる」といった、もっぱら内向きの感覚で外国人問題を考えている人も少なくない。「そんな国に夢や憧れが持てるでしょうか」というわけです。世界の労働市場をつぶさに見ている幹部氏にとっても、日本は「ミステリアス」な国で、労働者派遣法の改正問題も「ミステリアス」を繰り返していました。

「月刊人材ビジネス」編集委員、経済ジャーナリスト
本間 俊典
72年一橋大学経済学部卒業。75年4月毎日新聞社入社。主に経済畑を歩き、機械、貿易、東証、外務省、経済企画庁(現内閣府)、通産省(現経済産業省)などを担当。経済部、エコノミストを経て2001年10月から編集委員。06年3月退社、4月から本誌編集長、経済ジャーナリスト。
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